吊るしのスーツとは？メリット・デメリットを解説！

「吊るしのスーツ」という言葉を耳にしたことはありますか？
スーツを購入するときに、吊るしのスーツが良いのか、それともオーダースーツが良いのか、悩んでいる方も少なくありません。
そもそも吊るしのスーツとは、どのようなものでしょうか。
今回は吊るしのスーツについて、そのメリットやデメリットなどを解説いたします。
スーツを新調する際に、ぜひ参考にしてみてください。

吊るしのスーツとは

「吊るしのスーツ」という言葉は、一般的に「既製品のスーツ」を指します。これは、オーダーメイドスーツと対になる概念です。スーツが誕生した当初は、テーラーが顧客一人ひとりの体型に合わせて採寸し、そのデータを元にスーツを仕立てる「オーダーメイド」が主流でした。特にイギリスでは、スーツはテーラーによる手作りが一般的で、個々の体型や希望に応じて細かくカスタマイズされたものが提供されていました。

スーツ文化の始まり

スーツの起源はイギリスに遡り、特に19世紀のヴィクトリア朝時代に現在のスーツの原型が確立されました。当時のスーツは、日常的な装いというよりも、特別な場面で着用されるものであり、スーツを仕立てるには時間と費用がかかることが普通でした。この時期、テーラーが顧客の体型を詳細に採寸し、完全にその人に合わせたオーダーメイドのスーツを作るのが当たり前だったのです。これにより、スーツは個々の体型にぴったりとフィットし、まさに「一人だけのために作られた服」として大切に扱われていました。

スーツの合理化と吊るしスタイルの誕生

しかし、スーツ文化がアメリカに渡ると、合理性と効率を重視する新しい販売方法が生まれました。特に20世紀に入ると、工業化と大量生産の進展により、スーツは個別に仕立てられるものから、既製品として販売される形に変わっていきました。アメリカでは、イギリスで行われていたような一人ひとりの採寸を省略し、標準的な体型に基づいたサイズを基準に工場で大量生産するスタイルが確立されました。この方式により、スーツの製造コストが削減され、より多くの人々が手軽にスーツを手に入れることができるようになったのです。

「吊るし」という言葉の由来

「吊るし」という表現は、店頭にスーツがハンガーに吊るされ、顧客が自由に試着し、即購入できる状態を指しています。この方式は、個々の顧客の体型に合わせた調整が必要ないため、購入までの時間が大幅に短縮され、価格もオーダーメイドよりも手頃になります。こうした「吊るし」のスーツは、日常的にスーツを必要とするビジネスマンや、特別な場面でスーツを求める多くの人々にとって手軽で便利な選択肢となりました。

吊るしのスーツのメリット

吊るしのスーツには、さまざまなメリットがあります。
スーツを着る目的は、人によって異なります。
メリットやデメリットを覚えて、上手に使い分けていきましょう。

すぐに購入できる

吊るしのスーツの最大のメリットは、その手軽さとスピードにあります。何よりも「すぐに購入できる」点が大きな魅力で、店頭に既に完成品が揃っているため、試着してサイズが合えば即座に購入できます。急なビジネスミーティングや出張、面接、式典など、急いでスーツが必要な場合にもすぐ対応できるのは非常に便利です。オーダーメイドスーツとは異なり、製作期間を待つ必要がなく、必要な時にすぐ手に入れられるのが大きな利点です。

購入後も簡単な裾直しや袖丈の調整など、即座に行える場合が多く、自分の体にフィットした形で仕上げてもらうことが可能です。店頭でその場でフィット感を確認し、必要であればすぐに調整ができるので、フィット感に対する不安も軽減されます。これにより、吊るしのスーツは自分の体に合ったスーツをすぐに手に入れることができるという実用的なメリットを提供しています。（ただし、完全なフィット感や調整可能な範囲などはオーダースーツに大きく譲らざるを得ません。）

また、価格帯も幅広く、さまざまな予算や用途に合わせた選択肢が揃っているのも魅力です。ビジネスシーンに限らず、フォーマルからカジュアルまで、幅広いデザインやスタイルのスーツが手に入るため、どのような場面にも対応可能です。初めてスーツを購入する人や、複数のスーツを持ちたいという方にとっても、手頃な価格で選べるのが吊るしのスーツの大きな強みです。

さらに、スーツの種類やデザインの選択肢が豊富で、その時の気分やシチュエーションに合ったスーツを手軽に選べる点もメリットです。特に、最近では既製品のクオリティが向上しており、オーダーメイドに近い仕上がりのものも出てきています。このため、デザインや質感にこだわる人にも満足のいく選択ができることが増えています。

トレンド感がある

吊るしのスーツの生産をしている企業は、常にトレンドを研究しています。
よって、そのときの旬を取り入れたシルエットやデザインのスーツを作っています。
そのため、店頭に行けばいつでもシーズンごとにブラッシュアップされたスーツを購入することができます。
また、既製品は新作の開発スピードがとても速いです。
これは、大量生産がもたらすメリットだと言えます。

リーズナブルな価格

吊るしのスーツの大きなメリットとして挙げられるのが、価格が比較的リーズナブルであるという点です。
これは、標準体型に合わせてサイズを限定し、その型で大量生産することによって1着あたりの原価を抑えているためです。
よって、あまり費用がかけられない方に吊るしのスーツは最適です。

吊るしのスーツのデメリット

ここからは、吊るしのスーツのデメリットについてご紹介いたします。
購入後に後悔しないよう、事前にチェックをしておきましょう。

サイズやデザインに制限がある

吊るしのスーツのデメリットとして挙げられるのは、サイズやデザインに制限があることです。
本来スーツというものは、胸囲・肩・ウエスト・袖など、一人ひとりの身体的な特徴に合わせて作られるものです。
しかし、吊るしのスーツは、標準体型を基準に作られるため、どうしてもサイズにズレが生じてしまいやすくなります。
これらのような制限があるため、吊るしのスーツはどうしても自分の理想に完璧にマッチするスーツを見つけにくくなります。

個性を演出しにくい

吊るしのスーツは、より多くの方が着られるようなデザインやシルエットであるため、自分の個性を出せるようなスーツの選択肢は少なめです。
また、大量生産されているため、人気ブランドであれば、同じスーツを着ている人を見かけることもあります。
よって、人と被りたくない方にはあまりおすすめできません。

品質に満足いかないことも

吊るしのスーツの場合、品質面にもデメリットを感じることもあります。
既製品のスーツは、コスト重視で作られることが多いため、オーダースーツと比較すると、生地や縫製の質を落としているケースも見られます。
これは、ブランドやメーカーにもよって異なりますが、価格に反映してしまうことは否めません。
そのため、商品によっては耐久性に欠けていて、すぐに着られなくなってしまう場合もあるので、注意が必要です。

「吊るし」と「オーダースーツ」の違いとは

「吊るしのスーツとオーダースーツ、結局どちらのほうがいいの？」とお悩みの方は多いと思います。
特にこだわりがない人や、あまりスーツを着用しないという場合には、吊るしのスーツでも問題はありません。
また、普通体型であれば、ほとんどの吊るしのスーツが似合うので、価格面でも既製品のほうが助かります。
一方、オーダースーツは、既製品が体格や好みに合わない方や、よりスタイル良く見せたい方におすすめと言えるでしょう。
よって、吊るしのスーツとオーダースーツでは、どちらが良いかと言うと、どうしても個人差が出てしまいます。

オーダースーツがおすすめの理由

ここからは、オーダースーツのメリットについてご紹介いたします。
最近は日本でもオーダースーツが流行していて、吊るしのスーツよりもオーダーしたほうが、かっこ良く着こなせると考えている方が増えています。
なぜオーダースーツが良いのか、その魅力をチェックしてみましょう。

サイズがぴったり合う

吊るしのスーツは大量生産なので、どうしても自分の体格に完全にフィットしているスーツを見つけることは困難です。
つまり、多少なりの不満を持ちながら、そのスーツを着用していくことになります。
一方、オーダースーツは、個人の身体に合わせるため、体型に合ったサイズのスーツを仕立てることができます。
自分の体型に合わせて作られているので、当然身体にフィットし、着心地も良いと言われています。
また、ジャケットに横ジワができてしまったり、スラックスがパツパツになってしまったりという心配もありません。
オーダースーツは完成までに時間はかかりますし、比較的に価格も高くなるかもしれませんが、仕上がりはそれだけの価値が保証されます。

デザインにこだわることができる　

オーダースーツの大きな魅力は、デザインに徹底的にこだわることができる点です。既製品のスーツは限られたデザインやスタイルしか選べませんが、オーダースーツは一から自分の好みやスタイルに合わせて作り上げることが可能です。そのため、個性を最大限に表現することができ、世界に一つだけの特別な一着を手に入れることができます。

まず、ディテールのカスタマイズが可能という点が、オーダースーツの大きな魅力です。例えば、ジャケットのラペルの形や幅、ポケットのデザイン、さらにはボタンの数や種類まで選ぶことができます。ラペル一つを取っても、クラシックな印象を与えるノッチドラペル、華やかさを演出するピークドラペルなど、選べるオプションは多岐にわたります。また、ジャケットのボタンの数をシングルにするかダブルにするか、どちらを選ぶかによっても、全体の印象が大きく変わります。こうした細かなディテールにこだわることで、自分の好みにぴったり合ったスーツを作ることができます。

次に、オーダースーツのデザインには、細部へのこだわりを反映させることができます。例えば、ポケットの種類一つにしても、フラップ付き、スラントポケット、パッチポケットなど、用途や好みに応じて選択できます。また、スーツの裏地にまでこだわることができるのも、オーダーメイドならではの魅力です。普段は見えない部分ですが、裏地に自分好みの色や柄を取り入れることで、スーツを着る度に特別感を味わうことができます。たとえば、ビジネスシーンでは落ち着いた外観を保ちつつ、裏地に遊び心のあるデザインを採用することで、オンとオフのギャップを楽しむことができるのです。

さらに、スーツ全体のシルエットやフィット感を自分好みに調整できるのも、オーダースーツならではの利点です。体型に合わせてスーツを作ることができるのはもちろんのこと、全体のシルエットをシャープにしたり、ゆったりとしたデザインに仕上げたりと、シーンや個人のスタイルに合わせた調整が可能です。こうした自由度の高さは、既製品では味わえない特別な体験をもたらしてくれます。

オーダースーツは、細部にこだわることで着る人の個性を引き立てるだけでなく、その場にふさわしいデザインを自由に選ぶことができる点が魅力です。フォーマルな場で着用する一着であれば、シンプルでクラシックなデザインを選ぶことができますし、少しカジュアルなシーンでは、ユニークで冒険的なデザインを取り入れることも可能です。また、仕事用として着用するスーツであれば、信頼感や落ち着きを感じさせるデザインを選ぶことができますし、結婚式やパーティーといった特別なイベントでは、華やかさや品格を演出するデザインにすることも可能です。

オーダースーツのデザインにこだわることで、他の誰とも違う、自分だけのスタイルを表現することができます。既製品のスーツでは得られない満足感や、自分だけの一着を着こなす喜びを味わうことができるのです。オーダースーツは、単なる服ではなく、着る人のライフスタイルや個性を反映した、特別な存在と言えるでしょう。

周囲への印象が良くなる

身体にフィットしたスーツを着ることは、周囲に「スーツを着こなせている人」という印象を与えることができます。
ビジネスマンにとって、身だしなみを整えることは、大切なマナーのひとつです。
ビジネスシーンの中には、重要な商談など、身だしなみに最大限の配慮をしなくてはならない場面があります。
そのような場において、身体にフィットしたオーダースーツを着用することは、相手に良い印象を与えることができるのです。
また、スーツにこだわりを持たれている方は、オーダースーツと吊るしのスーツの違いを、すぐに判別することができます。
そのような方々は、あなたがオーダースーツを着用していることに好感を抱くでしょう。
初対面の人と多く関わるビジネスの場において、相手に良い印象を持ってもらうことはとても重要です。
身だしなみに気を配るという意味においても、オーダースーツを着用することはおすすめなのです。

生地やデザインにこだわることができる

既製品のスーツは、どうしてもベーシックなデザインや、同じような生地が多くなってしまいます。
オーダースーツのメリットは、好きな色や柄の生地を選べることです。
毎日着るスーツだからこそ、生地やデザインにこだわりたいと考える人には、オーダースーツが最適です。
同じカラーの生地でも艶や手触りなど違いがあるため、見ているだけで楽しいです。
豊富な生地の中から、理想の生地を見つけるという特別な体験は、オーダーならではの醍醐味です。
また、オーダースーツの場合、生地以外にもデザインのカスタマイズなど、細部に渡ってこだわりを取り入れることができます。
シルエット・襟型・ポケットの形・ボタン・裏地に至るまで、自分らしくカスタマイズできるのです。
スーツスタイルに自分らしさを出したい方にとっては、オーダースーツは自分の好みの１着を作り上げることができるので、スーツを手にしたときの満足度は高くなります。

2着目からは簡単にオーダーできる

オーダースーツというと、既製品のスーツよりも手間や時間がかかってしまい、手が出しにくいというイメージを持つ方もいるかもしれません。
しかし、オーダースーツは一度作ってしまえば、2着目以降は簡単にオーダーすることできるのです。
「オーダースーツは敷居が高い」と感じられる理由のひとつに、採寸が挙げられます。
しかしこの採寸は、スーツを作るたびに必要というわけではありません。
同じお店でスーツを作る場合は、身体のサイズが変わらなければ、次回以降の採寸は不要になります。
よって、生地を変えるだけなど、比較的スムーズにスーツを作ることができるのです。
最近では、ネットやアプリでオーダーできる店舗も増えてきています。
忙しい方でも、いつでもどこでも依頼できるので、とても便利なサービスといえるでしょう。

吊るしのスーツとオーダースーツを上手に使い分けよう

今回は、吊るしのスーツについてご紹介いたしました。
既製品スーツでも、魅力的なモデルはたくさんあります。
よって、オーダースーツのほうが、絶対的に良いというわけではありません。
しかし、品質の良さや自分の体型に合っていることを考慮した場合、オーダースーツのほうが魅力的だと言えます。
それぞれのメリットやデメリットを覚えておき、吊るしのスーツとオーダースーツを上手に使い分けてみましょう。